栄養学雑誌
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70 巻 , 6 号
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短報
  • 武政 睦子, 市川 和子
    2012 年 70 巻 6 号 p. 325-330
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/08
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】血液透析(以下HD)患者の低栄養が問題となって久しい。その中でも,HD患者では血清セレン濃度が低く,血清セレン濃度が低いことが心血管系合併症の要因であること,死亡率,とくに感染症死亡のリスク要因になることが報告されている。今回,HD患者の血清セレン濃度およびセレン摂取量の現状把握を行った。
    【方法】HD患者10名(男性4名,女性6名)を対象とした。年齢は,62.7±5.9歳,透析歴は,190±157ヵ月であった。4日間の食事調査,血液生化学検査および体格を調査した。
    【結果】血清セレン濃度は12.7±2.4(9.0~17.3)μg/dlであり,セレン摂取量は51.1±14.3(31.6~70.8)μg/dayであった。血清セレン濃度と血清尿素窒素濃度,たんぱく質摂取量,セレン摂取量はいずれも有意な正の相関(r=0.804,0.697,0.660)が認められた。セレン摂取量とエネルギー摂取量,たんぱく質摂取量,リン摂取量,カリウム摂取量は有意な正の相関(r=0.766,0.740,0.672,0.674)が認められた。血清セレン濃度(μg/dl:Y)と標準体重当たりたんぱく質摂取量(g/標準体重kg/day:X1),セレン摂取量(μg/day:X2),カリウム摂取量(mg/day:X3)との間に重回帰式 Y=10.633X1+0.142X2-0.004X3+3.590(r=0.962,p=0.001)が得られた。
    【結論】HD患者において,たんぱく質摂取量の低下がセレン摂取量の低下を引き起こし,血清セレン濃度の低下につながることが危惧される。
  • 中嶋(坂口) 名菜, 高野 優, 福島 英生, 北野 直子, 森 政博
    2012 年 70 巻 6 号 p. 331-336
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/08
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】マゲイシロップは血糖指数(GI: glycemic index)が低い甘味料として注目されている。そこでグラニュー糖の代わりにマゲイシロップを配合した食品を摂取してもらい,マゲイシロップの食後高血糖抑制効果について検討した。
    【方法】疾患を認めない若年成人女性7名を対象に,2006年4~9月の間に実施した。約12時間の絶飲・絶食後,早朝空腹時の血糖値を測定した。WoleverとJenkinsの方法に基づき,基準食の血糖曲線下面積(AUC: areas under the curve)を算出し,糖質量を基準食と同量に調整した8種類の試験食(ロールケーキ,アイスクリーム,ジャム,糖尿病食にグラニュー糖もしくはマゲイシロップを配合)を基準食と同じ方法で摂取させ,同一被験者による基準食,グラニュー糖配合,マゲイシロップ配合の3群比較を4食品ごとに行った。基準食のAUCを100として各試験食のAUCの割合を求めGIを算出した。
    【結果・結論】一般的に用いられるグラニュー糖を使用した食品(対照食)に比べ,マゲイシロップを配合した食品(ロールケーキ,アイスクリーム,ジャム)においてAUC,GIの有意な低下が示された(p<0.05)。本研究により一定量以上のグラニュー糖と置換したマゲイシロップ含有食品3種類(ロールケーキ,アイスクリーム,ジャム)において食後高血糖抑制効果が確認された。
実践報告
  • 會退 友美, 赤松 利恵
    2012 年 70 巻 6 号 p. 337-345
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/08
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】社会的認知理論を活用した幼児の偏食に関する保護者の関わり方についての親子対象プログラムの実践を報告する。
    【方法】2011年5~7月,都内幼稚園1園に通う園児と保護者および児童館1館の幼児クラブの幼児と保護者を対象に,社会的認知理論に基づいた子どもの偏食に関するプログラムを実施した。プログラムの内容は,親子を対象としたパネルシアター会と食育だよりの配布であった。プログラムを評価するため,保護者を対象に自己記入式質問紙調査を行った。解析対象者は,事前事後の質問紙に回答した幼稚園62名,児童館29名とした。
    【結果】子どもが食べないことに対する不安,苦手な食べ物を食卓に出す頻度,子どもが食べない頻度は,事前事後で統計的に有意な変化はみられなかった。しかし,子どもが食べない際の保護者の関わり方である“過去の成功体験を思い出させる方法”は,幼稚園で用いる者が増加した(χ2=9.60,p=0.01)。プログラム全体のコメントでは,食育だよりの内容を知っている者が多く,最新の知見などを掲載することが求められた。その他,子どもの偏食に対する不安が軽減されたと回答している者もあった。
    【結論】幼児の偏食をテーマにとりあげ,親子を対象に社会的認知理論に基づいたプログラムを実践した結果,子どもの偏食に対する不安が軽減したなどの意見も得られた一方,内容の改善の要望もあった。今後の課題としてプログラムの改善と効果検証が必要である。
資料
  • 秦 希久子, 角田 伸代, 稲山 貴代
    2012 年 70 巻 6 号 p. 346-361
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/08
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】在宅で生活する脊髄損傷者を対象に,理論枠組みに基づく調査票にて食生活全体を評価することを目的とした。
    【方法】社団法人全国脊髄損傷者団体連合会の登録会員2,731名を対象に,2011年9月,郵送法による自記式質問紙調査を実施した。調査票には,生活の質(QOL),健康状態,食物摂取状況,行動,食行動の中間要因,準備要因,属性,食環境の8つの概念で構成された理論枠組みを用いた。回答が得られた1,000名(回収率37%)のうち性,年齢,障がい名,損傷部位が未記入の者,施設入所者を除外した886名を解析対象とした(有効回答率32%)。年齢は39歳以下(若年),40~64歳(中年),65歳以上(高年)の3区分,損傷部位は頸髄損傷,胸髄損傷,腰髄損傷の3区分について集計をした。
    【結果】66%の者が「健康である/まあ健康である」と回答した。日常の食物摂取頻度得点の平均(標準偏差)は男性16.1(5.2)点,女性17.6(4.8)点であった。食生活の各要素(行動変容段階,結果期待,セルフ・エフィカシー,食態度や食スキル)をみると,行動変容段階では「維持期」が多く,結果期待が良好であり,食生活の問題を判断し対処している者が多かった。男性よりは女性,若年・中年よりは高年の方が良好な回答が多かった。頚髄,胸髄,腰髄の損傷部位の区分で違いがみられた主な項目は,公的介護サービスの有無,排便状況,食事作りおよび食品購買行動であった。
    【結論】理論枠組みでみた在宅の脊髄損傷者の食生活は,国民健康・栄養調査の結果や本調査と同じ理論枠組みでみた健常者を対象とした先行研究と比較して大きな差違はなく,女性,高年において良好な回答が多く見られた。損傷部位による違いは限定的であった。
  • 山田 正子, 細山田 康恵, 布施 望, 瀬戸 美江, 澤田 崇子, 石井 國男
    2012 年 70 巻 6 号 p. 362-372
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/08
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】病院における栄養食事指導および他職種との関連業務に関する実態調査を行い,その結果を管理栄養士養成施設における臨床栄養分野の教育の一資料とすることを目的とした。
    【方法】調査用紙は全国の1,000病院に郵送した。有効回答病院数は410病院であり,回収率は43.0%であった。調査内容は,集団指導の種類および食品交換表の利用状況,カーボカウントの取り入れ状況,食物と薬の相互作用の説明状況,チーム医療およびカンファレンスの種類および参加状況,クリニカルパスへの栄養食事指導の組込み状況とした。
    【結果】集団指導では,糖尿病教室が92.2%の病院で行われていた。食品交換表は,糖尿病の交換表が個人および集団指導で28.3および49.0%と,糖尿病,腎臓病および糖尿病性腎症の3種類の食品交換表の中で最も多く使用されていた。食物と薬の相互作用の説明は,81.9%の病院で行われていた。チーム医療専任の管理栄養士がいると回答した病院の割合が10%以上のチーム医療は6種類あり,中でも栄養サポートおよび褥瘡チームがいずれも約72%と他のチーム医療より高かった。管理栄養士の参加の回答が10%以上であったカンファレンスは8種類あり,中でも糖尿病が47.7%と全カンファレンスの中で最も多かった。
    【結論】集団指導および参加しているカンファレンスには糖尿病が最も多かったことから,管理栄養士養成施設における糖尿病教育の重要性が明らかとなった。また,管理栄養士が参加しているチーム医療およびカンファレンスの種類も多く,他職種との連携についてさらに理解を深める必要があることが示唆された。管理栄養士養成施設は,コアカリキュラムの内容を基本にしつつ,病院業務の現状を把握しながら臨床栄養分野の教育をしていく必要があるといえる。
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