栄養学雑誌
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原著
1年以上授乳を続けた女性の鉄栄養状態
─妊娠初期から授乳期および卒乳後までの縦断的検討─
渡辺 優奈善方 裕美石田 裕美上西 一弘
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2016 年 74 巻 4 号 p. 89-97

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抄録

【目的】本研究は,1年以上授乳を続けた女性における,妊娠初期から授乳期および卒乳後までの鉄栄養状態の実態を明らかにすることで,妊婦,授乳婦への栄養指導に活用できる資料を得ることを目的とした。
【方法】対象者は授乳期間が1年以上であった女性30名とし,妊娠初期(妊娠5~12週),出産時,産後1ヵ月,産後6ヵ月,産後1年,卒乳後(卒乳後3~6ヵ月)の6時点を解析対象とした。妊娠初期から卒乳後までの鉄関連指標(赤血球数,ヘモグロビン濃度,ヘマトクリット値,血清鉄濃度,フェリチン濃度)および鉄摂取量の推移,卒乳後フェリチン濃度に関連する指標の検討を行った。
【結果】赤血球数,ヘモグロビン濃度,ヘマトクリット値および血清鉄濃度は,妊娠期に低下したが産後1ヵ月で回復し,卒乳後まで変化はみられなかった。妊娠期に低下したフェリチン濃度は,産後1年までに徐々に回復傾向を示したが,卒乳後には再び妊娠初期よりも低値となった。また,妊娠初期から卒乳後まで鉄摂取量に変動はなかった。卒乳後のフェリチン濃度は,月経再開からの期間と負の相関(r=-0.424,p=0.020),妊娠初期のフェリチン濃度とも正の相関(r=0.444,p=0.014)がみられた。
【結論】フェリチン濃度は,妊娠期に低下し産後1ヵ月では回復しないが,授乳継続により,その間に漸次増加する傾向がみられた。これより,授乳期に積極的な鉄摂取を促すことで,産後の鉄貯蔵を増加させることが期待できる。

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© 2016 特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
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