栄養学雑誌
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74 巻 , 4 号
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総説
  • 安井 明美
    2016 年 74 巻 4 号 p. 81-88
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/06
    ジャーナル オープンアクセス
     平成27年12月に,5年ぶりとなる日本食品標準成分表2015年版(七訂)が公表され,同時に改訂版のアミノ酸成分表編と脂肪酸成分表編,新規作製の炭水化物成分表編が公表された。本編には,FAOの報告書のエネルギー換算のための好ましい方法によるアミノ酸組成に基づくたんぱく質と脂質のトリアシルグリセロール当量に加えて,炭水化物の単糖当量が収載された。冊子版からは英語が外され,英語版は文部科学省のホームページに掲載された。本編のフォーマットの修正,索引番号の新規採用等で利便性が向上した。成分表2010では備考欄に記載されたビタミンC等に相違がある食品が本編では個別に本表化されている。また,食品名もごれんしをスターフルーツに等,わかりやすい名称に変更されている。収載食品の充実では,新規食品として,日本人の伝統的な食文化を代表する食品である刺身と天ぷら,魚介類のフライ,から揚げなどの調理食品等が加わった。サンプリング,収載値の決定法を紹介した。既存データの見直しも行われている。新たな分析は,分析機関に依頼されて行われるが,使用する分析法について,食品群ごとに代表的なマトリックスの食品を選定して単一試験室による妥当性確認または検証が要求されている。新規の分析法の採用,従来法の見直しによって分析マニュアルが改訂され,ホームページに掲載されている。電子版も充実し公開された。
原著
  • 渡辺 優奈, 善方 裕美, 石田 裕美, 上西 一弘
    2016 年 74 巻 4 号 p. 89-97
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/06
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】本研究は,1年以上授乳を続けた女性における,妊娠初期から授乳期および卒乳後までの鉄栄養状態の実態を明らかにすることで,妊婦,授乳婦への栄養指導に活用できる資料を得ることを目的とした。
    【方法】対象者は授乳期間が1年以上であった女性30名とし,妊娠初期(妊娠5~12週),出産時,産後1ヵ月,産後6ヵ月,産後1年,卒乳後(卒乳後3~6ヵ月)の6時点を解析対象とした。妊娠初期から卒乳後までの鉄関連指標(赤血球数,ヘモグロビン濃度,ヘマトクリット値,血清鉄濃度,フェリチン濃度)および鉄摂取量の推移,卒乳後フェリチン濃度に関連する指標の検討を行った。
    【結果】赤血球数,ヘモグロビン濃度,ヘマトクリット値および血清鉄濃度は,妊娠期に低下したが産後1ヵ月で回復し,卒乳後まで変化はみられなかった。妊娠期に低下したフェリチン濃度は,産後1年までに徐々に回復傾向を示したが,卒乳後には再び妊娠初期よりも低値となった。また,妊娠初期から卒乳後まで鉄摂取量に変動はなかった。卒乳後のフェリチン濃度は,月経再開からの期間と負の相関(r=-0.424,p=0.020),妊娠初期のフェリチン濃度とも正の相関(r=0.444,p=0.014)がみられた。
    【結論】フェリチン濃度は,妊娠期に低下し産後1ヵ月では回復しないが,授乳継続により,その間に漸次増加する傾向がみられた。これより,授乳期に積極的な鉄摂取を促すことで,産後の鉄貯蔵を増加させることが期待できる。
実践報告
  • 新保 みさ, 河嵜 唯衣, 小島 唯, 赤松 利恵
    2016 年 74 巻 4 号 p. 98-105
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/06
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】体重管理における誘惑場面の対策を包括的に教育するために,フリップチャート形式の教材を開発し,その実行可能性を検討することを目的とする。
    【方法】誘惑場面,食べ過ぎないための対策,食べ過ぎた後の対策を含むフリップチャート教材「誘惑に負けない体重管理」を開発した。この教材はフリップチャート,ワークシート,誘惑日記からなる。2015年6月に東京都A区で募集した16名(男性7名)に教材を用いた教室を実施した。教室では,誘惑場面を振り返り,対策を考えさせ,フリップチャートに沿って説明を行った。教室直後と1か月後に教材の評価や対策の実施状況を質問紙でたずねた。
    【結果】参加者の年齢の中央値(25,75%タイル値)は49.5(40,52)歳だった。教室直後の調査は参加者全員が回答し,教室の内容が「とても分かりやすかった」と答えた者は12名(75%)で,「今日をきっかけに頑張りたい」などの意見があがった。1か月後の調査では(回答者11名,69%),食べ過ぎないための対策を「まあまあできた」と答えた者が5名,食べ過ぎた後の対策を「よくできた」が1名,「まあまあできた」が3名だった。
    【結論】教材を用いた教室では誘惑場面における対策が理解され,実行への前向きな意見があげられたが,1か月後にも対策を実施できている者は少なかった。今後は教材を修正し,対策の継続的な実行を促すための支援やモニタリング方法を検討する必要がある。
資料
  • 上田 由理佳, 須藤 紀子, 笠岡(坪山) 宜代, 山田 佳奈実, 山村 浩二, 下浦 佳之
    2016 年 74 巻 4 号 p. 106-116
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/06
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】被災者の健康を維持するために重要な炊き出しと要配慮者への食支援を円滑におこなうためには,平常時からの備えが必要である。そこで,東日本大震災から2年半後における全国の自治体の準備状況と,食支援の中心的な役割を担う行政栄養士の災害対策への関わりについて明らかにする。
    【方法】全国の都道府県,政令指定都市,中核市,保健所政令市,特別区,市町村の保健医療福祉担当者を対象に,郵送法による質問紙調査を行った。
    【結果】回収率は71.1%であった(n=1,272)。平常時からの炊き出し練習と予定場所の選定は5割前後の自治体で行われていた。要配慮者への災害時の備えについての指導や助言,特殊食品の準備体制が実施されている割合は1~3割であった。炊き出しの具体的な内容を含む食支援に特化したマニュアルの作成には,行政栄養士の地域防災計画の策定への関わり,都道府県であること,行政栄養士の複数配置が影響していた。また,地域防災計画の策定に行政栄養士が関わっている自治体は,関わっていない自治体に比べて,災害時に特殊食品の需要状況を把握するシステムをつくっている割合(19.2% vs 6.9%)と入手方法について検討している割合(36.4% vs 23.6%)が有意に高かった。
    【結論】行政栄養士の複数配置や地域防災計画策定への関わりが,炊き出し等の具体について定めている食支援マニュアルの作成や要配慮者のための特殊食品のニーズ把握や入手方法の検討に影響していることが分かった。
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