栄養学雑誌
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原著
あいりん地域に生活の拠点を置く者の栄養学的特性
田原 遠
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2020 年 78 巻 1 号 p. 13-23

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抄録

【目的】あいりん地域に生活の拠点を置く者の生活状況,栄養学的特性について明らかにすることを目的とした。

【方法】大阪社会医療センター付属病院通院中の患者と高齢者特別清掃事業参加者に対し,半定量食物摂取頻度調査票による栄養調査と身体状況・生活状況調査を行い計255名より完全回答を得た。うち生活困窮度の低い5名を除いた250名(生活保護受給者=生保群とする123名,生活保護未受給者=未受給群とする127名)を対象者とした。対象者が平成26年国民健康・栄養調査における所得の低い集団(低所得群とする)が示している特徴を有しているかどうか,また生活保護受給の有無で対象者の特性に差異が生じるかどうかの検討を行った。

【結果】本対象者は残歯20本未満の者が79.2%,喫煙者は58.8%と共に極めて多く,野菜類摂取量は極めて少なかった。両群間の比較では,生保群において仕事をしている者がより少なく,肥満者はより多く,野菜類,果実類,きのこ類,乳類の摂取量はより多かったが,飲酒習慣者の割合や嗜好飲料類の摂取量はより少なかった。

【結論】本対象者は低所得群の特徴を有しており,なおかつ低所得群よりもより顕著な傾向を示した。両群間の比較より,生保群においては活動量に見合った摂取量に関する栄養教育が,未受給群においては飲酒に関する教育,外食や中食でも野菜類を摂取できるような栄養教育が必要であると考えられた。

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© 2020 特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
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