栄養学雑誌
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避難所における栄養の参照量を満たす弁当を提供する際の障害
─平常時の協定締結と発災後の内容調整について─
武田 環須藤 紀子島田 郁子坪山(笠岡) 宜代
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2023 年 81 巻 4 号 p. 176-183

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抄録

【目的】避難所での弁当提供は,調理担当者の負担軽減に加え,栄養素等供給量の増加が期待できる。災害発生後早期に「避難所における栄養の参照量」の1/3付近またはそれ以上の栄養素等を供給する弁当(以下,参照量を満たす弁当)を提供するうえでの障害を,平常時の協定締結と発災後の弁当内容の調整という2つの観点から明らかにすることを目的とした。

【方法】2022年1月に,南海トラフ巨大地震の被害が想定されているX県の弁当製造・販売業者4社を対象に,半構造化インタビューを実施した。対象業者は,大手コンビニエンスストアエリアフランチャイザー,スーパーマーケット,大学生活協同組合2社であった。

【結果】参照量を満たす弁当提供に関する協定を締結する際の障害として,発災時の食材調達のための平常時からの備蓄や物流の確保,弁当業者が行政の担当者や窓口を知らない,大学生活協同組合が自治体と災害協定を締結するためには大学の承認が必要という3点が明らかになった。また,発災後に弁当の内容を調整する際は,弁当の栄養成分表示と食材調達が障害になることが分かった。

【結論】食材調達は,弁当業者にとって,参照量を満たす弁当提供に関する協定締結と,発災後に弁当の内容を調整する際の両方で障害となりうる。弁当業者は,災害時の食材調達について平常時から準備をするとともに,自治体や物流業者と,災害時の食材や弁当の運搬について協議をすることが望まれる。

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© 2023 特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
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