2023 年 81 巻 6 号 p. 279-287
【目的】地域在住高齢女性を対象に,サルコペニア等に関連する位相角低下者の特徴を明らかにするとともに,食品摂取多様性評価票を用いた摂取食品群との関連を検討した。
【方法】本研究は横断研究である。2014年7月から2021年9月の期間,月1回程度開催される通いの場に参加し,同意を得た232名の初回測定値を解析に用いた。調査項目は,身体計測値(身長,体重,握力,下腿周囲長),Mini-Nutritional Assessment-Short Form(MNAⓇ-SF),体組成分析,食品摂取多様性評価とした。
【結果】位相角重度低下者では年齢が有意に高く,サルコペニア該当割合も増加し,骨格筋量,四肢骨格筋指数(Skeletal muscle mass index:以下SMI)は有意に低下した。多項ロジスティック回帰分析の結果,位相角軽度低下に対しいずれの食品群も有意ではなかった。一方,位相角重度低下に対し,年齢,MNAⓇ-SFはいずれのモデルでも有意であった。牛乳・乳製品に関しては,「2日に1回以下」を基準とした場合に,「ほとんど毎日」摂取することが,位相角低下リスクの低減に有意に寄与していた(オッズ比0.39(95%信頼区間0.16~0.93))。
【結論】位相角重度低下者では年齢が有意に高く,サルコペニア該当割合も増加し,骨格筋量,SMIは有意に低下していた。位相角低下には牛乳・乳製品を「ほとんど毎日」摂取することがリスク低減に寄与していたが,他の食品群との関連は認められなかった。