1954 年 12 巻 1-2 号 p. 29-32
各人の人体腸内には, 人体の消化液の全力を以てしても消化せられない難消化物たる蒟蒻マンナンを分解する Aerobacter 群細菌が存する。蒟蒻マンナン分解 Aerobacter 群細菌の糞便中出現の頻度は10-3~10-5倍稀釈便液, 糞便にしての10~0.1mgである。蒟蒻マンナン分解 Aerobacter 群細菌の Aerobacter 群細菌との出現の比率は1/100~1000であるが, その大部分は1/100ぐらいの比率である。分離した蒟蒻マンナン分解 Aerobacter 群細菌34株は, その生物学的性状はいずれも同一で Aerobacter cloacae 型の異型菌である。この種細菌が各人の腸内に存し, 難消化物を消化し, 人体の栄養に貢献していることが窺知される。かかる意味合からしても, 人体の腸内細菌は決して単なる異物的存在, 寄生的存在ではなく共生的意義を持つものなることは疑を入れない。