栄養学雑誌
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糖尿病患者の実態 (第1報)
病名確定前の実態および治療食に対する理解度
松平 敏子
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1974 年 32 巻 3 号 p. 114-120

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抄録

1970年7月~10月に, 大阪府下の4病院において, 入院および外来の糖尿病患者男32例 (40歳以上23例), 女39例 (40歳以上34例) に対し面接, 実態調査用紙に記入させ, 次の結果を得た。
(1) 学歴は現在の義務教育以上を終えた者が男59%, 女38%で, 女の48%は旧制の義務教育である小学校卒であった。
(2) 労作強度はふつうの労作以下が男91%, 女92%であった。
(3) 既往最大体重が標準体重より20%以上の肥満者は男44%, 女56%であった。
(4) 遺伝関係を持つ者は男31%, 女44%であった。
(5) 標準体重より11%以上の肥満者のうち, 遺伝関係のある者は35%であるが, 肥満でない者のうちには55%に遺伝が認められた。
(6) 受診の動機となった糖尿病症状は, 煩渇, 易疲労性, 多飲, 倦怠, 体重減少であった。また, 1人平均4~5種の自覚症状を持っていた。
(7) 合併症は男50%, 女44%が持ち, 硬化性血管障害が20%で最も多く, 次が肝疾患であった。
(8) 病名判明以前の食生活は穀類を1日4209以上摂取している者が男75%, 女67%であった。肉類・牛乳・緑黄野菜の摂取回数も一般に少なく, 栄養的にバランス不良の傾向がみられた。
(9) 食事療法についての質問10題に対し, 入院患者の全問正解率は39%であったが, 外来患者は17%で劣っていた。また男より女が劣っていた。義務教育以上の教育を受けた者の正解率44%に比し, 義務教育までの者は16%で劣っていた。
以上の調査結果により, 病名判明前の患者の個々の栄養摂取状態のアンパランスを知り, それと同時に糖尿病の早期症状を一般に理解させ早期治療させたいこと, および糖尿病教室の栄養指導法の改善すなわち対象者にもよるが平易に具体的に反復指導しなければならないことを痛感した。

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