抄録
1. 幼若シロネズミの4週間飼育において, 20%ダルテン飼料に0.5%リジンを補足すると著しい体重増加を示した。同時に血清, 肝, 小腸の遊離スレオニン濃度は1/2~1/3に低下した。しかし他のアミノ酸では大きな濃度変化は見られなかった。
2. 腹腔内に注射された14C-スレオニンと3H-ロイシンの分布に対するグルテン飼料へのリジン補足の影響を検討したが, 筋肉, 小腸, 肝での14Cと3Hの遊離区分に対するタン白質区分の比はリジン補足により増加した。特に筋肉での14Cにおいてこの傾向が著しかった。
3. これらの結果から, グルテン飼料へのリジン補足により, 血液, 組織のスレオニン濃度低下は各臓器タン白質へのスレオニンの取込みと同時に筋肉へのスレオニンの移行とそのタン白質への取込み増加が原因となっていると推定された。