栄養学雑誌
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妊娠中の味に対する嗜好および忌避について
唐沢 久仁子武藤 静子
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1978 年 36 巻 1 号 p. 31-37

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抄録

分娩後3~7日以内の産褥中の婦人443名を対象に, 妊娠中の味に対する嗜好および忌避を調査した。甘味, 酸味および塩味に対し, 妊娠中「特に食べたかった時」(嗜好),「特にいやだった時」(忌避) を経験した場合, その該当妊娠月齢の記入を求めた。嗜好あるいは忌避経験者数を妊娠月齢 (2~10ヵ月) 別, ならびに妊娠3期 (初期, 中期, 末期) 別に集計した。
妊娠3ヵ月において, 全対象のうち約40%に酸味嗜好の経験がみられた。これは妊娠の進行に伴ない減少し, 6ヵ月以降では10%以下となっていた。一方, 甘味に対しては妊娠3ヵ月において忌避が16%みられたが, 6, 7ヵ月以降で嗜好者が増加し, 9, 10ヵ月においては30%であった。これらを妊娠3期別で比較すると傾向はさらに明確となり, 酸味では初期に, 甘味では末期に, ともにほぼ50%の嗜好経験者が認められた。塩味に対しては嗜好, 忌避ともに妊娠の時期にかかわりなく低かった。
さらに対象を男児出生者 (M群) と女児出生者 (F群) に2分し, 検討した。妊娠初期における酸味に対する嗜好はM群が, 妊娠中期における甘味に対する嗜好ではF群がそれぞれ有意に高く, 胎児の性が妊娠中の母親の味に対する嗜好に影響を与える可能性が示唆された。

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