1982 年 40 巻 1 号 p. 31-38
本報は, 成長期ラットを用い, 蒸煮しない分離大豆たん白質に対する制限アミノ酸の補足効果について, 全卵たん白質およびカゼインの場合と比較検討した。分離大豆たん白質については, メチオニン, スレオニン, リジン, およびその他の必須アミノ酸混合物を順次付加的に添加した区を設けた。そして, たん白質の栄養価, ならびにたん白質・脂質代謝に関連する血清成分を測定した。
その結果, 蒸煮しない分離大豆たん白質においても, 蒸煮した場合と同様に制限アミノ酸はほぼ含硫アミノ酸とスレオニンによって代表されることが明らかにされた。すなわち, 分離大豆たん白質にメチオニンとスレオニンを添加することにより, 増体重6.3g/日, たん白効率 (PER) 4.0, 生物価99となり, いずれも成長期ラットに対する最大値に近い値が得られた。また, 真の消化率は97%前後で, 極めて高いことが示された。一方, 血清成分についてはメチオニンとスレオニンの添加により, アルブミン, A/G比, 尿素-N, HDLコレステロール, HDLコレステロール/総コレステロールの各値が全卵たん白区とほとんど同じレベルまで増減し, それぞれ改善されたことが示された。
以上の結果より, 分離大豆たん白質は他の食品たん白質などから制限アミノ酸が補足されれば, たん白質の栄養価ならびに血清コレステロール代謝に対する改善効果が極めて優れていることが明らかにされた。