栄養学雑誌
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市販ビタミンE補給食品中のトコフェロール同族体含量と過酸化物価ならびに保存後の変化
平原 文子山口 迪夫
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1984 年 42 巻 1 号 p. 21-30

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抄録

本研究は, 最近市場に多く出回っているビタミンE補給食品の実態を明らかにする目的で行った。その市販製品28検体について,α-,β-,γ-,δ-トコフェロール含量, リノール酸含有割合および, 含有油の過酸化物価を調べた。また, トコフェロール含量ならびに過酸化物価については30℃で3ヵ月間保存した前後の値を比較検討した。
結果, ならびに製品の内容表示や価格に関する考察は以下のとおりである。
1) 検体の25%は, 加工食品の表示内容を保証するJSD (日本栄養食品協会検定済食品) マークを付しており, 86%は総トコフェロール含量を, 36%はα-トコフェロール含量を表示してあった。
2) 製品中の油脂1g当たりのα-トコフェロール含量は0.7~470mgと大幅な開きがあり, 同様に1ヵプセル当たりの含量も1.7~100.3mgと幅が大きかった。したがって, 消費者が実際のビタミンE摂取量を知るには,α-トコフェロール量あるいはα-トコフェロール当量の正確な値が表示されることが望ましい。
3) 検体の多くは脂肪酸組成中のリノール酸含有割合が高く (19.3~71.6%), この値が50%を上回るものが全体の78%を占めていた。
4) 検体の過酸化物価は全般に低く, 含有油kg当たり5meq以下の製品が, 全体の64%を占めていた。この値は30℃, 3ヵ月保存後には約3倍に増加し, その際, トコフェロールの分解割合はδ,γ,α型の順に高かった。
5) 原料が1種類である製品はほとんどなく, 大多数は数種の原料よりなっており, このことはトコフェロール組成からも裏づけられた。総VE量の高いものほどα-トコフェロールの含有割合が高く,γ-トコフェロールのそれは低く, 両トコフェロール含有割合の間には比較的強い負の相関がみられた。
6)α-トコフェロール当量1mg当たりの価格は, 1円未満から40円までの開きがあった。
7) 栄養のバランスのよい食事をしていれば, 特にVE欠乏症はみられないが, さらに多くの量を摂取しようとする人は, それらの製品の実態を認識しておく必要がある。

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