栄養学雑誌
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n-3とn-6系多価不飽和脂肪酸比率の異なる油脂を投与した場合のラット脂質代謝の変動
滝田 聖親中村 カホル早川 享志福富 麻子印南 敏
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1989 年 47 巻 3 号 p. 141-150

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抄録

ラードと魚油の混合割合を変え, n-3P/n-6P比の異なる5種類の油脂を投与し, 血清と肝臓の脂質組成への影響を観察するとともに, 血清, 血小板, 肝臓, 睾丸, 副睾丸周辺脂肪組織の脂肪酸組成, ならびにC20:5/C20:4比の変動を比較検討した。その結果は次のとおりであった。
1) 血清TC, TG, PLの低下には, n-3P/n-6P比0.92で十分であり, それ以上比率が増加しても低下はみられなかった。HDL-Cho 濃度は, n-3P/n-6P比が増加すると低下することが認められた。
2) 肝臓のTC濃度は, n-3P/n-6P比が増加しても変化しなかったが, TG濃度は低下した。PL濃度はn-3P/n-6P比の増加により上昇したが, その高低とは関連性が認められなかった。
3) 血清, 肝臓, 睾丸および睾丸周辺脂肪組織では, 飼料脂質のn-3P/n-6P比が増加するにつれて, n-6系PUFAのC18:2とC20:4は減少し, n-3系PUFAのC20:5とC20:6は上昇した。
4) 血小板では, C18:2の割合は飼料脂質のn-3P/n-6P比2.34まで上昇し, それ以降大きな変動が認められなかった。また, 飼料脂質のn-3P/n-6P比が高まるにつれて, C20:4は緩慢に減少, C20:5n-3P/n-6P比2.34まで上昇, それ以降はほとんど変動が認められなかった。
5) 血清, 肝臓および血小板のC20:5/C20:4比は, 飼料脂質のn-3P/n-6P比5.13まで速やかに上昇し, それ以降は緩慢な上昇を示した。
6) 以上の結果は, 生体内の脂質代謝が食事脂質中のn-3P/n-6P比により影響されることから, n-3Pとn-6Pの摂取バランスを適当に保持することの重要性を示唆している。

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