ラードと魚油の混合割合を変え,
n-3P/
n-6P比の異なる5種類の油脂を投与し, 血清と肝臓の脂質組成への影響を観察するとともに, 血清, 血小板, 肝臓, 睾丸, 副睾丸周辺脂肪組織の脂肪酸組成, ならびにC
20:5/C
20:4比の変動を比較検討した。その結果は次のとおりであった。
1) 血清TC, TG, PLの低下には,
n-3P/
n-6P比0.92で十分であり, それ以上比率が増加しても低下はみられなかった。HDL-Cho 濃度は,
n-3P/
n-6P比が増加すると低下することが認められた。
2) 肝臓のTC濃度は,
n-3P/
n-6P比が増加しても変化しなかったが, TG濃度は低下した。PL濃度は
n-3P/
n-6P比の増加により上昇したが, その高低とは関連性が認められなかった。
3) 血清, 肝臓, 睾丸および睾丸周辺脂肪組織では, 飼料脂質の
n-3P/
n-6P比が増加するにつれて,
n-6系PUFAのC
18:2とC
20:4は減少し,
n-3系PUFAのC
20:5とC
20:6は上昇した。
4) 血小板では, C
18:2の割合は飼料脂質の
n-3P/
n-6P比2.34まで上昇し, それ以降大きな変動が認められなかった。また, 飼料脂質の
n-3P/
n-6P比が高まるにつれて, C
20:4は緩慢に減少, C
20:5は
n-3P/
n-6P比2.34まで上昇, それ以降はほとんど変動が認められなかった。
5) 血清, 肝臓および血小板のC
20:5/C
20:4比は, 飼料脂質の
n-3P/
n-6P比5.13まで速やかに上昇し, それ以降は緩慢な上昇を示した。
6) 以上の結果は, 生体内の脂質代謝が食事脂質中の
n-3P/
n-6P比により影響されることから,
n-3Pと
n-6Pの摂取バランスを適当に保持することの重要性を示唆している。
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