栄養学雑誌
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食のイメージ・マッピングによる栄養教育場面での思考と対話の支援
守山 正樹松原 伸一
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1996 年 54 巻 1 号 p. 47-57

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抄録

栄養調査は栄養教育の一貫ではあっても, 手順としての両者は独立したものとみなされる場合が多い。しかし, 相手を理解する行為であるはずの “調査” とそれに続く “教育” とが互いに別のものであると, そこでの教育は保健医療従事者からの一方的なものになりやすい。本研究では, 保健医療従事者と対象者とが対話の流れの中で互いに相手を理解しながら, その理解を直接的に栄養教育へと反映させることを目標に, (1) 個人の食に関する意識・イメージを可視化・表現するイメージ・マッピング手法の開発, 及び (2) 得られたマップの読まれ方の解明を試みた。
筆者らが発案したマッピングの手法は, 長崎県N町における健康教室での試行を通して具体化され, 以下の4点にまとめられた。(1) 主要な食品名のラベル化, (2) 横軸上でのラベル配列, (3) 縦軸方向へのラベル展開, (4) ラベルの固定。
〈被験者がマップを眺めた時に現れる思考を, 被験者自身が書き留める〉という方法で “マップの読まれ方” を言語化し, 読まれ方の共通点を探った。長崎市内のK短期大学食物専攻科学生70人がマップを読む作業に参加した。学生がマップを見て自由記述した内容は, (1) 特定の食品ラベルの位置への着目, (2) 複数の食品ラベルのバランスへの着目, (3) 全ラベルの分布型への着臥の3パターンに類型化された。
食生活をマップにより視覚化すると, 視覚的な認識・思考が発動され, 食に関する対話が誘導される。対象者が栄養に関連してもつ他の種類の概念・思考 (栄養素, 食パターン等) も活性化される。食について深く理解し, 学ぶ場として対話を位置づけることが, 今後の栄養教育の基本として重要であろう。

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© 特定非営利活動法人日本栄養改善学会
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