栄養学雑誌
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女子学生ランナーの合宿時における鉄補足が赤血球δ-ALAD活性に及ぼす影響
川野 因武田 一鈴木 妙子梶本 雅俊
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1998 年 56 巻 5 号 p. 265-275

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抄録

本研究は, 中長距離女子学生ランナー16人を対象に, 合宿中の食事性鉄補足と赤血球合成能との関係を明らかにすることを目的とした。食事性の鉄には, 鉄 (III) +オリゴガラクチュロン酸配合ウーロン茶を用いた。被験者を, 鉄を補足した鉄補足群 (8人) と補足しない非補足群 (8人) の2群に分け, RBC数, Hb, Ht, 網状赤血球数, 血清鉄, フェリチン, TIBCの各値とδ-ALAD活性を測定した。その結果, 以下のことが明らかになった。
1) 生活時間調査の結果, 合宿中の消費エネルギー量は合宿前に比べ有意に増加していた。
2) 鉄補足群ではたんぱく質, 脂質, 糖質, カルシウム, 鉄, ビタミンB1・B2・Dの摂取量が, 非補足群ではたんぱく質, 鉄, ビタミンDの摂取量が合宿によって有意に増加した。
3) 合宿前の両群選手に鉄欠乏性貧血者はいなかった。
4) GOT活性, GPT活性, γ-GTP活性は非補足群で合宿後に有意に上昇していた。しかし, 鉄補足群ではこのような変化はなかった。
5) CK活性値とHt値, MCV値, 及び網状赤血球数は両群ともに合宿後に有意に上昇した。
6) 合宿前の血清鉄は, 非補足群が鉄補足群に比べ有意に高く, 合宿後の両群には有意な差がなかった。合宿によって非補足群の血清鉄は有意に低下した。
7) δ-ALAD活性 (nmol/ml/hr) は鉄補足群でのみ合宿後に有意に上昇した。
8) 同一期間の両群のδ-ALAD活性値の間には有意な差がなく, 本酵素活性は合宿前に比べ合宿後に有意に上昇した。
以上の結果より, 合宿が栄養素等摂取状況を改善する可能性, 食事性鉄補足が血清鉄の変動に影響する可能性, 及び合宿による運動量の増加が赤血球合成能を高める可能性が示唆された。

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