前報で報告したように, 特に低エネルギーの糖尿病治療食においては, 鉄, 亜鉛, 銅, マグネシウム及びカルシウムの供給不足が認められた, 本報告では, ミネラルウォーターと水道水の各元素濃度を原子吸光法で測定した。また, 煎茶と紅茶の浸出実験を行い, その浸出液についても, 同様の測定を行った。この測定値から〔1L飲用時の実測値/栄養所要量〕×100により, 各元素の寄与率を算出し, 糖尿病治療食におけるミネラル供給量に及ぼす飲料摂取の影響を検討した。その結果, ミネラルウォーターの中でも輸入品には, 1L飲用時の寄与率がカルシウムでは12%, 28%, マグネシウムでは9%, 14%と高いものがあった。煎茶と紅茶の浸出液では, 1L飲用時のマグネシウムへの寄与率は約6%と比較的高く, マグネシウムの給源として考慮してよいように思われた。これに対して, 浸出液中の鉄, 亜鉛及び銅濃度は, 水道水に比べて高いが, 1日当たりの飲用量を考慮すると, これら元素の供給源になり得るとは考え難かった。今後, これら飲料からのミネラルの吸収率などについての検討が必要であるが, 糖尿病治療食に不足しがちなミネラルの中でも, カルシウムとマグネシウムについては, ミネラルウォーターや茶類などの飲料からの供給が期待できるのではないかと考えられた。