栄養学雑誌
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神経難病患者における安静時エネルギー代謝量と脳萎縮との関連
宮崎 とし子服部 成子三谷 美智子小長谷 正明
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2001 年 59 巻 1 号 p. 27-30

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抄録

神経難病患者は, 精神活動や脳萎縮の程度が各々異なり, 進行すると寝たきりの生活を余儀なくされる。一方で, 脳は, 単位重量当たり他臓器の10倍ものエネルギー源と酸素を消費する。そこで, 今回我々は, 適正な栄養補給を目的に, 29人の神経難病患者 (男性14人,61.6±9.5歳, 女性15人, 58.1±15.3歳) と健常者22人 (男性11人, 58.1±2.4歳, 女性11人, 58.9±1.1歳) の安静時エネルギー代謝量を測定した。疾患は, 多系統萎縮症 (MSA) 7人, 他の脊髄小脳変性症 (SCD) 6人, パーキソニズム (P-ism) 8人, 運動ニューロン疾患 (MND) 4人, ハンチントン舞踏病 (HC) 2人, リー脳症1人, スモン (SMON) 1人である。HCの2人, SCDとリー脳症の各1人においては, 安静時でも粗大な不随意運動がみられた。
不随意運動症例の安静時エネルギー代謝量は, 25.1~37.8kcal/kg (31.8±5.7kcal/kg) と高値を示した。これらの症例を除いた神経難病患者の安静時エネルギー代謝量は, 21.5±3.3kcal/kgであり, 正常対照の24.0±36kcal/kgより有意に低かった (p<0.02)。安静時エネルギー代謝量は, 身体活動能力の差による影響は少なく, 精神活動が低いほ (p<0.001), また, 脳萎縮が強いほど (p<0.002) 有意に低下した。
以上の結果, 神経難病患者では, 精神機能や脳組織がよく保たれている患者と不随意運動の症例は比較的高い安静時エネルギー代謝量を示しており, この研究の結果は寝たきり患者の栄養補給計画に際して考慮すべきと考えられた。

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