地域保健活動における生活習慣病予防対策の一助とする目的で, 一般に日常生活における健康づくりのための実践・行動が徹底し難いといわれる中年期男性を対象に, 高脂血症予防の観点から, 高脂血症群 (異常群と略す) と非高脂血症群 (正常群と略す) 別に血液所見, 食物摂取, 生活習慣等について比較検討した。
1) 身体状況では, BMIは正常群22.3, 異常群24.3で, 異常群に過体重傾向者が多かった。血圧状況では, 高血圧者 (境界域を含む) は正常群12.5%に対し, 異常群は30.6%と高率であった。
2) 血液所見における異常者出現率が, 正常群に比べ異常群で高かった項目は, 総コレステロール, 中性脂肪, 尿酸, 赤血球数, 血糖等であった。
3) 食品群別摂取量は, 正常群, 異常群とも, いも類, 牛乳, 緑黄色野菜, その他の野菜が約50%の摂取率であった。正常群, 異常群間に差がみられたものは, 魚類, いも類であり, 異常群が低値であった。油脂, 砂糖, 菓子類は, 異常群が摂取を控えている傾向がみられた。
4) 栄養素等摂取状況については, 両群ともマグネシウム, ビタミンE, 食物繊維に著しい不足がみられた。各栄養素について, 両群間に差は認められなかった。
栄養比率は, 両群とも穀類エネルギー比が48%以下と低かった。ナトリウム/カリウム比は, 異常群が正常群より高く, カルシウム/マグネシウム比では, 両群ともに適正比を上回った。
5) 生活習慣では,“運動習慣あり”では異常群が有意に高く, 高脂血症治療のための重要な要素として, 異常群は運動の実践を心がけていることが考えられた。
食習慣では,“欠食あり”,“偏食あり”,“食事時間の不規則”が正常群で多くみられ, 異常群では食習慣に気をつけた生活をしている者が多かった。
6) 野菜摂取量階層別の身体状況並びに血液所見は, 野菜摂取量の高い群は, 低い群に比べ, 中性脂肪値, 血糖値, 動脈硬化性指数が良好な結果を示した。
野菜摂取量階層別食品群別摂取量については, 野菜摂取量の高い群ほど各食品群の摂取状況が良好な傾向を示した。
7) 中性脂肪と食品群別摂取量との関連は, 中性脂肪が高い者ほど正常群では緑黄色野菜の摂取量が低かった。異常群では, 中性脂肪の高い者ほどその他の野菜摂取量が高く, 乳製品の摂取は低値を示し, 食品選択への配慮がみられた。
中性脂肪と運動, 血液所見等との関連では, 正常群は運動並びにHDLコレステロールに若干の関連がみられ, 異常群は中性脂肪が高いものほど肥満傾向がみられ, かつ, HDLコレステロールが低く, 運動不足の可能性が指摘された。
総コレステロールと食品群別摂取量との関連では, 両群とも卵類, 肉類などの食品摂取については十分配慮していた。
総コレステロールと血液所見との関連では, 両群とも中性脂肪, 動脈硬化性指数で最も強い関連を示した。
以上のことから, 異常群については適正体重を維持するとともに, 望ましい生活習慣, 中でも運動習慣を徹底させること, また, より積極的な野菜摂取への改善実践が, 血液所見の正常化に役立つものと考えられる。
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