栄養学雑誌
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リング法を用いた粘稠液状食品の簡便な物性評価の有効性
機器測定による物性評価との関係
高橋 智子大須賀 彰子川野 亜紀大越 ひろ
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2007 年 65 巻 3 号 p. 113-122

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抄録

本研究では, 調理現場などにおいても簡便に粘稠液状食品の物性を把握できる方法として, リング法を取り上げ, リング法により得られる広がり係数と, 機器測定による物性との関係を検討した。
1) 用いるリングの大きさにより, 試料による広がり係数の傾向が異なったため, 広がり係数から試料の物性の特徴を把握するには, リングの大きさ, 形状も考慮する必要があることが示された。
2) 試料を充填したリングから, 試料を取り除いた直後のリング内壁に付着した試料量を測定することにより, 付着エネルギー, 凝集性の試料間の比較が可能であることが示された。
3) プランジャーの上下運動による圧縮変形より測定されるテクスチャー特性の硬さを広がり係数より推測する場合, 粘稠性発現物質の異なる市販トロミ調整剤ごとに検討する必要があることが示された。
4) B型回転粘度計による流動特性は, 広がり係数が大きくなるに従い, ずり流動化流動の傾向を示す回転数依存指数は大きくなり, 12r.p.m.における粘度も小さくなった。また, 三次元網目構造を有することでゲル構造を示し, ずり流動化流動が大であるでんぷん系トロミ剤試料やキサンタンガム系トロミ剤試料と, ゾルのような構造を示し, ずり流動化流動が小であるグアーガム系トロミ剤試料とでは, 広がり係数とB型回転粘度計より得られた流動特性の関係は異なることが示された。
5) ばね緩和法により測定した超低ずり速度より得られた降伏応力と広がり係数の相関関係が高いことから, 広がり係数は試料の静置状態に近い物性を示すと考えられる。また, 広がり係数が大きいものほど, 降伏応力は小さいものとなった。

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