2016 年 11 巻 2 号 p. 375-389
本研究では全国の自治体における日本人と外国人の転入超過の状況を観察した.特に外国人の転入超過が日本人の転出超過の絶対値と同じか上回っている自治体を中心に,自治体の地域分布や人口学的特徴を検討した.総務省の2014年のデータを用い,総人口の転入超過を日本人分と外国人分に分けて分析した結果,外国人分の転入超過が日本人分の転出超過の絶対値と同じか上回っている自治体は分析対象全体の7%だった.それらの自治体は相対的に北関東や名古屋圏などで多く,北海道や東北で少なかった.また単純平均によれば,相対的に国外からの外国人分の転入が多いほか,総人口が多い,日本人の65歳以上人口割合が低い,外国人割合が高いなどの特徴があった.今回の分析による限りでは,全体として外国人の転入超過が自治体人口の転出超過に対して十分な量的効果をもたらしているとはいえず,またこのことは特に小規模自治体で顕著だった.