E-journal GEO
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調査報告
ウランバートルにおけるゲル地区再開発事業とその実態
松宮 邑子
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2019 年 14 巻 2 号 p. 378-403

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抄録

ウランバートルでは,体制移行後の人口増加を背景にゲル地区が拡大した.本稿では,ゲル地区の居住環境を改善すべく立案された再開発事業を焦点に,それが遅々として進まない実態と,計画に翻弄される人々の姿を描き出した.ゲル地区はインフラ設備の欠如によって開発の必要性が叫ばれ,アパート化による居住環境の改善が図られている.しかし再開発事業は,実現への具体的な道筋が不明確であるがゆえに期待通りに進展していない.そればかりかゲル地区で従来から実践されてきた居住者自身の手による居住環境の改善を阻害している.一部のアパートは竣工し,入居者は生活の利便性が向上したと評価する半面,ゲル地区ならではの住まい方が継続できない困難も指摘する.ゲル地区のアパート地区への置換や短期間でのインフラ整備が現実的でない中,居住者が元来発揮してきた内発的な居住環境改善の実践を正当に評価し,下支えすることで活用できるような方策の模索が望まれる.

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© 2019 公益社団法人 日本地理学会
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