2020 年 15 巻 2 号 p. 242-252
本稿では,A県で公開されている2015~2019年度の教員採用試験の地理に関する筆記試験の問題を分析することから,教員養成課程において求められる教育内容を析出した.その上で,教員養成課程における地理学の教育実践の方向性について若干の展望を述べることを目的とした.分析の結果,60%以上の問題で正答するために「知識の有無」が要求されていたことから,「知識量」が求められていると判断できた.この結果,教員採用試験で求められる能力は,教員養成課程で地理学研究者の立場から提供される専門性と初等中等教育教員の日常的な教育実践に求められる専門性の深化を分断させていると指摘できる.