抄録
本研究は,冷蔵庫の買替えによる消費電力量の差からエネルギー効率ギャップの把握を試みる.エネルギー効率ギャップは省エネルギー政策の有効性を損なわせるものであり,この原因はこれまでの研究から明らかにされてきたが,その程度(大きさ)については意見の一致が見られない.そこで,世帯レベルのデータから冷蔵庫の買替え効果を明らかにするとともに,その効果からエネルギー効率ギャップの大きさを検討する.その結果,省エネルギー性能の高い冷蔵庫に買替えることによって,54.8%から64.9%の節電効果が推計された.この節電効果は,2014年から13年前の冷蔵庫の省エネ技術を2014年時点で利用可能な冷蔵庫の省エネ技術に切り替えることによって実現できる平均的な削減率である.また,この結果を基に計算した主観的割引率は市場利子率よりも大きいものの,これまでの先行研究の値よりも小さいものであった.冷蔵庫の省エネルギー技術が向上する中,冷蔵庫の買替えによって実現できる節電効果は無視出来ないものであると言える.