2022 年 17 巻 1 号 p. 1-11
タイ国南部ナコンシタマラート海岸平野の砂州の形成と発達を,衛星画像,DEM,掘削調査,堆積物の年代測定結果などに基づいて明らかにした.砂州Iは長さ80 kmに及ぶ連続性の高い砂州で,砂州Iの背後にあたる砂州の西側には低湿地が広がり,泥炭層が形成されている.泥炭層基底付近の年代から砂州Iは7500年前頃形成されはじめたと考えられる.砂州Iの東側には砂州IIが発達し,最も新しい砂州IIIは現在の海岸線を縁取るように発達している.埋没砂州Yは海岸平野南部のフラバット山付近から南に向けて延びており,海岸平野の西縁付近には更新世に形成された砂州Xが顕著に発達している.これらのうち,砂州X,砂州I,砂州IIが北から南に向けて発達したと判断されるのに対し,砂州IIIは北のパクファナン入り江に向けて延びている.このような違いは1500年前頃以降の海況の変化を反映していると考えられる.