2026 年 21 巻 1 号 p. 18-43
2024年,食料・農業・農村基本法が四半世紀ぶりに改正された.本論では改正に際しての新しいキーワードである食料安全保障と食料システム,および人口減少に着目し,地理学における議論の整理と展望を行った.まず,食料安全保障に関わっては食料アクセス,食料貿易に加え,不測時対応に焦点を当てた.次に食料システムに関わっては環境との調和という側面と価格形成および関係者の位置付けという側面から検討し,最後に人口減少に関わっては農業の持続的な発展と農村の振興という側面から,それぞれ検討した.環境との調和と国民への食料供給をになう合理的な価格形成を実現する食料システム像が具体性を欠き,食料安全保障を実現する上で不明瞭なことを指摘するとともに,その具体化のためには地理学の研究成果を活用することを提案した.あわせて,その際にモデルケースという手法からの脱却も提起した.