2021 年 3 巻 3 号 p. 188-193
37歳男性.抗NMDA受容体脳炎のため入院加療中のところ,痙攣様症状ならびに不穏症状があったため,バルプロ酸ナトリウム(以下,VPAと略)を十二指腸カテーテルより投与開始した.不穏症状が持続していたためVPAの最低血中濃度(以下,トラフ値と略)を測定したところ17.8 µg/mLと低値であり,TDMに基づき2,100 mg/日まで増量したが,VPAのトラフ値は治療域以下であった.そこで経腸栄養剤とVPAの投与タイミングを検討するとともに,栄養カテーテルの自己抜去にともない,先端の留置部位を胃内に変更したこともあり, VPAのトラフ値は61.2 µg/mLへ上昇した.VPAと経腸栄養剤の投与間隔を30分あけることによりVPAの吸収に対する経腸栄養剤の影響を軽減したことに加え,栄養カテーテル先端位置が胃内となり,胃や十二指腸から吸収されるようになったことで,血中濃度が上昇したと考えられた症例であった.