2019 年 63 巻 2 号 p. 41-45
蛋白質O-GlcNAc化は細胞内蛋白質の翻訳後修飾の一つであり,分子内のセリンあるいはトレオニン残基に1分子のN-アセチルグルコサミンが結合するO-結合型糖鎖修飾反応である.O-GlcNAc化は蛋白質の機能や性質を変化させることで,細胞の基本的生命機能の制御や難治性疾患の発症に関与する.O-GlcNAc化の修飾効率は基質蛋白質や細胞環境によって大きく異なるが,特定蛋白質の修飾効率を簡便かつ迅速に定量する解析技術は未開発であった.そこで我々は小麦胚芽由来レクチン(WGA; Wheat Germ Agglutinin)を利用し,O-GlcNAc化蛋白質を選択的に分離するアフィニティーゲル電気泳動法(WGA-SDS-PAGE)を考案した.O-GlcNAc化蛋白質は,ポリアクリルアミドゲルに重合したWGAと相互作用する事で泳動度が減衰し,高分子量側へとシフトするため,特異的抗体を用いたウェスタンブロットにより,そのO-GlcNAc化型と非修飾型の比率を算出することが可能である.本稿ではWGA-SDS-PAGE法の原理,及び複数の分子を例とした実験結果の解釈について概説する.