2019 年 63 巻 2 号 p. 35-39
タンパク質修飾はタンパク質機能の多様化という観点から,遺伝子の転写発現調節やタンパク質の輸送と分解に着目したシグナル伝達機構として注目されている.ビタミンAであるレチナールのオプシン修飾が視覚作用に関わることはよく知られている.一方,レチナールの酸化物であるレチノイン酸(RA)はヒト白血病細胞株HL60の分化誘導剤であり,急性前骨髄球性白血病患者を寛解させる.RAのノンジェノミックな作用機構としてレチノイルCoAを中間体とするRAによるタンパク質修飾反応(レチノイル化)を見出した.RA処理でHL60細胞分化初期にプロテインキナーゼA(PKA)の調節サブユニットはレチノイル化され,核内に移行したPKAが核タンパク質のリン酸化を促進することで,顆粒球様細胞への分化を誘導する可能性を示した.レチノイル化タンパク質の検出・同定・RA結合アミノ酸の決定に,電気泳動法,アミノ酸配列・TOF-Ms解析を駆使したので紹介する.