2022 年 66 巻 1 号 p. 23-26
卵巣癌は婦人科腫瘍の中で最も予後不良な癌種として知られており,特に卵巣明細胞癌(OCCCa)は抗癌剤低感受性であるため,再発癌・進行癌における予後は極めて不良である.我々はOCCCaの診断や分子標的となるような新規バイオマーカー探索に着手した.Lefty(Left-right determinant factor)は,卵巣癌の中でもOCCCaで有意に高発現であり,TGF-β/Akt/Snailシグナル系を介した上皮間葉転換やがん幹細胞化の誘導に関与していることを見出した.EBP50(Ezrin-radixin-moesin binding phosphoprotein 50)は,アポトーシス制御とDNA修復酵素であるPARP1の活性化維持に関与することにより,OCCCaの化学療法耐性能獲得及び予後不良に寄与することが示唆された.上記結果はともに,病理検体から高率にタンパク質の抽出,さらには感度および再現性の高い質量分析計による解析が起点となった成果である.