電気泳動
Online ISSN : 2189-2636
Print ISSN : 2189-2628
ISSN-L : 2189-2636
論文種目:一般論文
低濃度SDS抽出液を用いたSDS-PAGEによるタンパク質加熱変性過程の解析
大石 正道渡邊 沙巴羅松本 開夢
著者情報
ジャーナル フリー

2022 年 66 巻 1 号 p. 59-62

詳細
抄録

SDS-PAGEは,タンパク質を見かけの分子量で分離するための有用な手法であるが,SDSがタンパク質の複合体を解離させるだけでなくタンパク質の立体構造を壊すため,タンパク質の熱変性に伴う立体構造の変化を調べるには向いていない.そこで,我々はタンパク質抽出液に含まれるSDS濃度を低下させることによって,牛肉または魚肉を用いて加熱変性によるタンパク質アグリゲートの形成過程をとらえる手法を開発した.牛肉の場合,加熱した肉を0% または0.1% SDSを含む抽出液中でホモジェナイズし,6,200 rpmで低速遠心後の上清をSDS-PAGEにかけた.40℃ではミオシン重鎖,60℃ではコラーゲン,70℃ではトロポミオシン,80℃ではアクチンが,それぞれ凝集体を形成して沈殿し,ゲル中から失われていった.魚肉では,ミオシン重鎖は4℃でも抽出されにくく,50℃でアクチンとトロポミオシンが失われた.ドットブロット法で,非変性の魚卵タンパク質と強く反応するアレルギー患者の血清を用いたが,0.05% SDSを含む抽出液で魚卵タンパク質を変性させただけで,ウエスタンブロット法では全く反応が見られなかった.

著者関連情報
© 2022 日本電気泳動学会
前の記事 次の記事
feedback
Top