電気泳動
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論文種目:総合論文
肺腺がんにおけるNAP1L1発現の診断的有用性について
長塩 亮朽津 有紀
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2022 年 66 巻 1 号 p. 9-11

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抄録

がん組織中のがん幹細胞は抗がん剤や放射線療法に抵抗性を示すことが知られているが,存在量がごく少数であり,様々な研究に用いるのは困難である.我々はiPS化の技術を応用し,がん幹細胞様の肺腺がん細胞を樹立した.がん幹細胞様細胞を用いたプロテオーム解析により,がんの浸潤や予後との関連が示唆されるタンパク質が多数同定され,その一つであるNAP1L1に着目した.NAP1L1の診断的有用性を評価するため,193例の肺がん組織を用いた免疫染色を行った.腺がんにおけるNAP1L1発現は分化度,腫瘍径,病理学的ステージ,N因子,リンパ管浸潤,血管浸潤と有意に相関しており,またNAP1L1高発現群は低発現群に比して有意に予後不良であった.さらに,多変量解析の結果からNAP1L1の染色スコアは独立した予後不良因子であることが分かった.樹立したがん幹細胞様細胞を用いることで様々な検討が可能となり,今後のがん幹細胞研究の有効なツールとなることが期待される.

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© 2022 日本電気泳動学会
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