抄録
日本と韓国で施工された複式干拓堤防建設後の底生動物相の変化について,その共通点や相違点を明らかにして,今後の諫早湾への海水導入後の底生動物相変化を予測した.諫早湾干拓調整池では,潮止め1カ月後にホトトギスガイが一時的に増加した後,潮止め4カ月後には二枚貝類のヒラタヌマコダキガイとヨコエビ類のタイリクドロクダムシだけが見られるようになり,最終的に2006年以降は大型の底生動物は見られなくなった.一方,韓国のセマングム干拓予定海域内側では,2006年4月の防潮堤完成前後に,諫早湾と同様にヒラタヌマコダキガイとドロクダムシ類が増加したが,2008年7月以降はこれらの種も減少し,替わりに2009年からはホトトギスガイが急増している.また,韓国北西部の始華湖干拓でも同様に,潮止め後にヌマコダキガイ類とタイリクドロクダムシが増加した.これらの結果を基に予測すると,諫早湾への海水導入後は,数ヶ月程度でヒラタヌマコダキガイとタイリクドロクダムシが増え,その後,これらの種の活動により
堆積物中の酸化が促進されることで底質が改善され,他の底生動物も生息できるようになると考えられる.