抄録
本稿は,東アジア縁辺海における大気海洋相互作用を「大気を介した陸域から海洋への化学物質の循環・輸送」という
観点から捉え,東アジア陸域を起源とする大気エアロゾルなどの大気物質が,どのように東アジア縁辺海に輸送され,ま
た沈着し,海洋一次生産にどう影響を与えるかについてこれまでの研究例をまとめたものである.東アジア地域は,黄砂
などの自然起源エアロゾルに加えて,急激な経済発展や活発な人間活動を反映して人為起源エアロゾルが高濃度に混在するという世界的にも稀な地域である.これらの化学物質が東アジア域でどのような発生源から大気中に放出され,さらに大気エアロゾルとしてどう東アジア縁辺海域に輸送され海洋一次生産に影響を与えるかについて,特に多量栄養素である窒素化合物・リン化合物と微量栄養素である鉄に注目し解説する.