沿岸海洋研究
Online ISSN : 2434-4036
Print ISSN : 1342-2758
50 巻, 1 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 吉川 裕, 磯辺 篤彦, 石坂 丞二
    2012 年 50 巻 1 号 p. 1
    発行日: 2012年
    公開日: 2020/02/12
    ジャーナル フリー
  • 磯辺 篤彦, 加古 真一郎
    2012 年 50 巻 1 号 p. 3-9
    発行日: 2012年
    公開日: 2020/02/12
    ジャーナル フリー
    東アジア縁辺海において大気海洋相互作用が成立するか否か,領域大気モデルの結果を用いて論考した.黄海や東シナ海の陸棚域は,海上を通過する冬季温帯低気圧の発達に寄与している.陸棚域の海面水温や海流系は大気擾乱に敏感であるため,結果として相互作用が成り立つ可能性がある.
  • 立花 義裕
    2012 年 50 巻 1 号 p. 11-21
    発行日: 2012年
    公開日: 2020/02/12
    ジャーナル フリー
    1998年と2006年夏にオホーツク海でラジオゾンデ観測を実施した.その結果,霧の発生事例と,無発生事例,さらにメソスケールの高気圧が観測された.霧発生時と無発生時のそれぞれの特徴は次のようなものであった.霧発生期間:海洋から大気へ向かう潜熱顕熱輸送によって,大気下層は暖められる.混合層トップの霧頂上で放射冷却が起こり,混合層上部は冷却される.従って鉛直混合が誘発され混合層が発達維持され霧が発生維持される.海洋は大気によって冷やされ海洋表層に混合層を形成する.無霧期間:海面水温が海上気温よりも低い.顕熱輸送は大気から海洋に向かう.これは大気を安定化させる効果を持つ.従って上空の運動量は下向きには輸送されにくいことにより海上風が弱まる.この弱風効果によって下層大気が乾いているにも拘わらず潜熱フラックスが小さくなる.従って霧が発生しにくい.さらに,弱風であることは,海水側の境界層の鉛直混合を弱めることになり,海水の境界層では混合層が出来にくい.これらのことから霧発生の有無は海面水温が海上気温よりも低いかどうかが鍵となろう.
  • 古谷 浩志
    2012 年 50 巻 1 号 p. 23-38
    発行日: 2012年
    公開日: 2020/02/12
    ジャーナル フリー
    本稿は,東アジア縁辺海における大気海洋相互作用を「大気を介した陸域から海洋への化学物質の循環・輸送」という 観点から捉え,東アジア陸域を起源とする大気エアロゾルなどの大気物質が,どのように東アジア縁辺海に輸送され,ま た沈着し,海洋一次生産にどう影響を与えるかについてこれまでの研究例をまとめたものである.東アジア地域は,黄砂 などの自然起源エアロゾルに加えて,急激な経済発展や活発な人間活動を反映して人為起源エアロゾルが高濃度に混在するという世界的にも稀な地域である.これらの化学物質が東アジア域でどのような発生源から大気中に放出され,さらに大気エアロゾルとしてどう東アジア縁辺海域に輸送され海洋一次生産に影響を与えるかについて,特に多量栄養素である窒素化合物・リン化合物と微量栄養素である鉄に注目し解説する.
  • 石坂 丞二, エコ シスワント, 山田 圭子, 牧野 高志
    2012 年 50 巻 1 号 p. 39-44
    発行日: 2012年
    公開日: 2020/02/12
    ジャーナル フリー
    台風に対する基礎生産の応答は,船舶による観測が困難であるために研究が難しかったが,近年海色リモートセンシングデータの利用によって知見が蓄積されつつある.ここでは,我々のグループが日本周辺の縁辺海で行った4つの研究に関してまとめた.1)2004年に東シナ海を通過した台風21号について,海色を含めた様々な衛星データとともに,Argo フロートでの鉛直構造の観測データを解析し,新生産を見積もった.2)1998年から2004年の7年間に東シナ海を通過した13個の台風について,衛星データを定量的に解析し,風速や移動速度等の台風の特徴から基礎生産への台風の影響を推定する方法を提案した.3)済州島南部を通過した台風の影響によって形成された低水温・高クロロフィルa の水塊が移流して,対馬海峡に変化を起こした可能性を示した.4)日本海を通過した台風によって起こる低温化とクロロフィルa の増加の空間的な違いが,物理・化学・生物の鉛直構造の違いによって作り出されていることを示した.
  • 鬼塚 剛, 柳 哲雄, 鵜野 伊津志, 川村 英之, 尹 宗煥, 山中 康裕
    2012 年 50 巻 1 号 p. 45-51
    発行日: 2012年
    公開日: 2020/02/12
    ジャーナル フリー
    大気擾乱が日本海低次生態系に与える影響を調べるため,時間解像度の異なる複数の海面境界条件で物理-生態系モデルを駆動し,各ケースで基礎生産量の違いを比較した.年間基礎生産量は時間解像度の高い風応力を用いるほど増加し,季節としては春季から秋季にかけてケース間の差が大きくなった.大気擾乱による鉛直混合が栄養塩制限となる成層期における表層から亜表層の栄養塩濃度を増加させ,結果として基礎生産量を押し上げていると考えられた.日本海を含む東アジア縁辺海において物理-生態系モデルを用いて生物化学過程を計算する場合は,時間解像度の高い風応力で駆動するとともに大気からの栄養塩供給も考慮する必要がある.
  • 千手 智晴
    2012 年 50 巻 1 号 p. 53-59
    発行日: 2012年
    公開日: 2020/02/12
    ジャーナル フリー
    日本海深層に分布する日本海固有水は,大気からの冷却によって形成される.そこで,日本海固有水の変動と大気変動との関連について議論した.日本海固有水の水温には,昇温トレンドとともに20~30年周期の変動が認められる.一方,溶存酸素量には減少トレンドに,水温とほぼ逆位相の周期変動が重なっている.トレンドの原因は,地球温暖化による日本海固有水の形成の停滞と考えられる.一方,十年スケールの周期変動は,北極振動指数とよい相関を示す.このことは,日本海固有水の形成は,北極振動によって変調されていることを意味する.日本海固有水の形成に重要な気象擾乱にともなう寒気の吹き出しは,冬季の東アジア域の東西気圧傾度が小さい時期に活発であり,その原因として,同時期の東シナ海における正の海面水温偏差が気象擾乱の発生を促すことが示唆された.このように,日本海の熱塩循環は,上空の大気を通して東シナ海の変動とリンクしている.
  • 郭 新宇, 石 睿, 上野 浩史, 武岡 英隆
    2012 年 50 巻 1 号 p. 61-69
    発行日: 2012年
    公開日: 2020/02/12
    ジャーナル フリー
    瀬戸内海西部で取得した船舶観測データから,沿岸海域における海面水温,海上気温と海上風速の関係を調べた.海面水温と海上気温の空間変化に有意な相関関係が見られた.海面水温の勾配が海上気温のそれより大きいことと海上気温の勾配が陸上気温のそれより大きいことから,海上気温の空間変化は海面水温によるものと推定できる.一方,同じ場所における海面水温と海上風速の間に有意な相関関係が見られなかったが,海面水温と風下方向に一定な距離を離れた点の風速に有意な相関関係が見られた.このことは,海上風が海面温度変化に反応するのに一定の時間が必要であることを示唆する.海面水温の変化に対して海上気温と海上風が異なった応答を示した理由は両者に係る物理プロセスの違いにあると考えられる.海上気温は大気海洋間の熱交換を通して,海面水温の変化に応答するが,海上風は大気境界層内部の変化を通して海面水温の変化に応答する.
  • 中村 知裕, 古関 俊也, 三寺 史夫
    2012 年 50 巻 1 号 p. 71-77
    発行日: 2012年
    公開日: 2020/02/12
    ジャーナル フリー
    2003年7月オホーツク海高気圧発達時の下層雲について領域気候モデルを用いて調べ,海面水温への影響を検討した.オホーツク海では夏季も海面水温が低く,顕熱フラックスにより大気下層が冷却され下層雲(層雲または霧)が生じる.下層雲が出来ると,放射冷却で雲下には冷たい大気混合層が発達して海面乱流熱フラックスが上向きに強化され,海面への短波入射も大幅に遮蔽される.こうして,下層雲は有意な海面水温低下を引き起こし,下層雲-海面水温フィードバックが働きうる.このフィードバックは鉛直一次元過程ではないがオホーツク海全体で見ると成立しており,大雑把な見積もりでは下層雲もオホーツク海の夏季海面水温を低く保つのに有意に寄与している可能性が高い.
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