瀬戸内海の貧栄養化が初めて指摘されて,すでに10年経過した.その傾向は依然として続いており,もともと栄養塩レ ベルが低かった西部海域における漁業の衰退は極めて顕著である.本稿では,貧栄養化の原因について整理するととも に,そのトレンドと空間解析,さらにはロトカ・ボルテラモデルによる生態系の構造の変化について述べることで,その プロセスについて理解を深めることを目的とする.瀬戸内海の貧栄養化は明らかに人為的なものであり,今後とも回復は 望めそうにないため,漁獲量増大のためには効果的な局所的施肥が必要である.