沿岸海洋研究
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北海道オホーツク海沿岸域の海洋環境の季節変化と 海氷後退時期の経年変動がクロロフィルa 量に及ぼす影響
葛西 広海永田 隆一村井 克詞片倉 靖次舘山 一孝濱岡 莊司
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2017 年 54 巻 2 号 p. 181-192

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抄録

北海道紋別市の氷海展望塔(オホーツクタワー)で行われている海洋環境モニタリングの1996-2014年のデータを用いて,オホーツク海沿岸域の表層の海洋環境の季節変動を示すとともに,冬季~春季の海洋環境の経年変動と海氷密接度の関係について解析した.オホーツクタワー周辺域の表層水温は2月中旬に最小,8月下旬に最大となった.表層塩分は1月上旬に最小(31.60)を示した後,6-10月は33台前半の高い水準であった.海表面クロロフィルa(Chl. a)濃度は3月に増加し始め,4月に最大値(3.1mg m-3)を示した後,1-2mg m-3 で11月まで維持された.海表面の栄養塩濃度はChl. a 濃度の増加に伴って減少したが,その変動は栄養塩種によって異なった.これらの季節変動は紋別沿岸域のものと概ね近かった.紋別沿岸域の海氷密接度の減少の時期は年によって最大1ヶ月半変動した.ほとんどの年で,紋別沿岸域の海氷密接度が50%以下に減少してから16日後までにオホーツクタワー周辺域の海表面Chl. a 濃度は2mg m-3以上に増加した.これらから,オホーツク海沿岸域では海氷密接度の減少が初春季の植物プランクトンブルーム発現の主要な要因であることが示された.

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© 2017 日本海洋学会 沿岸海洋研究会
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