2024 年 23 巻 1 号 p. 29-43
筆者は、アテトーゼ型脳性麻痺を持ち、介助者に手伝って頂きながら論文を書いている。厚生労働省(2013)は“心の健康”として、①情緒的健康・②知的健康・③社会的健康を挙げ、身体の状態とこころは相互に関係しているとしている。本研究は、この定義に基づいて、特に③社会的健康に注目し、「相互作用」の観点から考察しようとするものである。独立変数を「相互作用」、従属変数を「心理的健康」に設定し、2022年11月11日に“CiNii”で5つのキーワードを入れ、合計44本の先行研究を見出した。そのなかから、「相互作用→心理的健康」というベクトルにあてはまる先行研究を判断した結果、本研究では16本を分析対象とした。そして、1.「高齢者の心理的健康」・2.「ソーシャル・サポート」・3.「職業ストレス」・4.「その他」に分類し、最後に今後の展望を考察した。①高齢者の心理的健康について、地域参加を促す社会組織・職場での若年経験者との人間関係のありようを考えていく必要性、②ソーシャル・サポートについてレジリエンス・親友の存在が心理的健康に良い影響を与え、③職場ストレスについては、職場環境・本人の行動の仕方の双方から検討する必要があることがわかった。今後の課題として、1.「相互作用」の意味を吟味したうえで変数に組みこむこと・2.本研究の独立変数と従属変数を入れ替えて検討すること・3.本研究で得られた知見を脳性麻痺者にどの程度当てはまるかを方法論を交えて検討することが挙げられた。