こころの科学とエピステモロジー
Online ISSN : 2436-2131
原著論文
東洋的自己観に基づく離人症の考察
─「私なくして」の領野における「私」の所在─
横洲 有咲 宮田 裕光
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キーワード: 離人症, 仏教, 自己同一性, 無我
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2026 年 8 巻 1 号 p. 16-34

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抄録
離人感・現実感喪失症 (DPD) では,自己自身や身体,外部世界から切り離されたような体験としての症状がみられると同時に,自己と対象との境界が溶け合い,一体感を伴う側面も存在するという,矛盾的な特徴があるとされる。本稿では,離人症における自己同一性の問題を論ずるにあたって,東洋的な自己観,特に仏教や京都学派に属する思想を参照する。そこで,「私は,私ならずして,私である」という命題を軸に,自己は固定的な実体ではなく,自己の解体と再構築という動的なプロセスによって成立するものであることを論じる。具体的には,日常で自明とされる「私 (A = A)」が,その内在する不確定性や「私ではない」側面 (i.e., A ≠ not A,さらにはA = ∞) を露呈し,いったん解体されることで,新たな自己が創出されるというモデルを提示する。このような動的な自己生成のプロセスは,人間存在の根源的な流動性や非連続性を示すものであり,離人症における同一律の変容体験の中で顕在化するものといえる。「私が私である」という静的な自己同一性の枠組みを越え出て,「私は誰でもなくて誰でもあり,その意味で私である」という普遍的な意識の層から離人症を捉え直すことは,離人症における体験の意味づけや理解に新たな視座を与えるものである。
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© 心の科学の基礎論研究会
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