日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: H109
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サイズ構造のある個体群の多種共存
*甲山 隆司
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抄録

競争関係にある固着性生物の安定共存は、水平空間を平均場近似した一般的な競争方程式ではうまく説明できない現象である。空間ベースで資源が制約される陸上植物の種間競争を考える場合、種間競争係数は自然には1となり、共存条件を満たさない。ここでは、空間の平均場近似を保ったまま、植物個体の生育にともなうサイズ変化を、もっとも単純な2サイズクラスによって表現するサイズ構造を取り込むことによって、種間競争係数を1としたまま、2種間の安定共存がもたらされることを示す。このモデルでは、種間・種内を問わず、個体間の相互作用において上層個体は下層個体の影響を受けず(一方向競争)、上層個体のほうが下層個体より資源要求量が大きい(サイズ非対称競争)ことを仮定する。共存条件は、デモグラフィックな素過程、すなわち繁殖・サイズ成長・死亡の密度依存性の有無との関係で整理できる。死亡が密度依存であるとき、かならず共存解が存在可能である。死亡が密度非依存であるときには、繁殖と成長がともに密度依存で、かつ資源要求量のサイズ非対称性でなければ共存解は存在しない。サイズによるサイズクラス数の増加に伴って、安定共存する種数が増加する傾向も指摘する。今回の結果は、シミュレーションに基づく樹木種間の共存機構に関する森林構造仮説(Kohyama 1993)を裏付けた。さらに、同仮説が、可能な共存機構の一端 (すなわち、繁殖と成長だけが密度依存で、サイズ非対称性がある場合) しか扱っていないことも明らかになった。

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© 2005 日本生態学会
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