日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: S5-5
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草原生態系における土壌炭素放出フラックス ---チャンバー法に基づく測定と評価---
*関川 清広
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抄録

 熱帯と温帯域の草原は陸域面積の1/5を占め,全生態系の30 %の土壌炭素を有する.また,樹幹という炭素プールをもつ森林に対し,草原では土壌炭素プールの寄与が高い.このため草原生態系がグローバルな炭素循環に与える影響は無視できず,温暖化の影響を鑑みると,特に草原における土壌炭素放出のメカニズム解明は,重要な研究課題といえる.演者は,本シンポジウムの研究対象であるチベット高山草原において,土壌炭素放出フラックスとして土壌呼吸を2種類のチャンバー法を用いて測定した.本草原では,夏期の地表温は晴天日には,夜明け頃の最低約0 ℃から日中の最高20 ℃以上と日較差が大きく,土壌呼吸の温度依存的な日変化を1日程度の測定で十分に検知できる.土壌呼吸測定に用いた手法は,密閉法(CC法)と通気法(OF法)である.CC法では,チャンバー密閉後,チャンバー内ガスを定期的に微量採取し,そのCO2濃度の時間的増加に基づいて土壌呼吸速度を算出する.OF法では,大気をチャンバーを経てCO2分析計に通気し,チャンバー入口と出口のCO2濃度差に基づいて土壌呼吸速度を求める.アクセスが困難で,電源の制約や厳しい環境の影響がある生態系では,野外操作が真空瓶によるガス採取のみであるCC法が便利である.OF法は電源が不可欠で,厳冬期の使用は困難であるが,連続測定が可能で,土壌呼吸に対する環境要因の影響解析が容易である.本草原では,盛夏の土壌呼吸速度は時間帯によって,CC法では200から700 mg CO2 m-2 h-1,一方OF法では100から800 mg CO2 m-2 h-1となった.本講演では,これら土壌呼吸データの手法間比較,日本の草原との比較から明らかとなる,本草原の土壌呼吸特性について紹介する.

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© 2005 日本生態学会
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