日本生態学会大会講演要旨集
第52回日本生態学会大会 大阪大会
セッションID: G208
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屋久島照葉樹林帯の植生遷移
*松岡 法明長谷川 大輔相場 慎一郎
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抄録

屋久島の照葉樹林帯の極相林と皆伐後に再生した二次林において、19年間の動態と地形の違いに伴う森林構造と種組成の変異を調べた。また、斜面崩壊後の初期植生、植林地および植林地伐採後の植生についても調査を行い、撹乱要因の異なる林分の遷移過程について考察した。調査は極相林4か所、二次林7か所、スギ林1か所、スギ植林地を伐採した後に自然再生した森林1か所、崩壊地5か所に設定したプロットで行った。プロットの面積は、崩壊地は100 m2、その他は400 m2である。各々のプロットにおいて成木(胸高直径2 cm以上の木本種)及び稚樹(胸高直径2 cm未満、樹高50 cm以上の木本種)・実生(樹高50 cm未満の木本種)・草本層(高さ2 m以下の維管束植物)の調査を行った。また、土壌分析・土壌中の埋土種子検出も行った。これらのデータを、過去に行われた一部の調査区での成木調査データと合わせて解析した。斜面崩壊後の一次遷移は、埋土種子密度の減少と草本層の発達により、実生の発生が困難と考えられ、先駆種となる落葉樹については、実生発生後の生育が制限される可能性も示唆された。このため、多くの高木層構成種の生育は遅れるが、アブラギリのみは成木段階に達しており、本種が屋久島における一次遷移の有力な先駆種であり、過去の斜面崩壊の履歴を知る上での指標種ともなりうると考えられた。これに対し、人為的な森林伐採後の二次遷移は、繁殖体が残存し、土壌環境も変化が少ないため、森林の回復が非常に速い。しかし、優占種や林冠構成種、森林動態に地形の違いによる変異が見られ、小面積単位でみた二次林の自然再生過程は、地形による物理的条件の違いと、それに伴う撹乱前の植生の違いに影響を受けていると考えられた。また、森林伐採後にスギ植林地へと改変された林分では、森林環境が自然林に比べ顕著に変化することが示唆された。この森林環境の変化が、屋久島のスギ植林地伐採後に自然再生した林分に、アブラギリが純林状に優占する要因の一つと推測された。

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© 2005 日本生態学会
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