抄録
バイオメトリクスは生体認証や身体認証などと訳されている.本稿ではその精度評価方法の開発の歴史,特に米国国立標準技術研究所(NIST)等による性能評価試験,米国規格協会(ANSI)等によるデータフォーマットの米国標準化の動きから,ISO/IEC JTC1 SC37で開発された国際標準化までの,バイオメトリクス精度評価関連の標準化活動を概観する.精度評価というと,ベンチマークテストのような試験を想像される方も多いと思う.しかし,フレームワークとして開発された精度評価方法の国際標準ISO/IEC 19795 シリーズに書かれている内容はそのようなものではない.ここではSC37 で既開発あるいは開発中のIS(International Standard)やTR(Technical Report)にどのようなものがあるか紹介し,トピックとして反復性と再現性,偏りのないデータ収集のあり方,サンプルデータセットからの統計的性能推定などを取り上げて,それらの重要性を指摘したい.また,ルーツの異なる専門用語定義や,翻訳の難しさなどについても触れる.最後に今後の研究が期待される未解決な課題について述べる.