2010年に提案された部分列数え上げデータ圧縮法は,無ひずみデータ圧縮法の代表例であるジブ・レンペル符号と同様,情報源の確率構造についての事前知識を前提としないユニバーサル符号の一種である.ただし,後者が逐次的な処理を基本とするのに対し,部分列数え上げデータ圧縮法は対象データ全体を読み込んで一括して処理するオフラインの圧縮法である.オフラインのユニバーサルデータ圧縮法としては,BW変換に基づくブロックソート法が有名である.部分列数え上げデータ圧縮法は,ブロックソート法をはじめ,数え上げ符号,反辞書法との関係が深く,これらを体系として理解する上で欠かせない学習材料である.しかも,情報理論的な解析から実装のためのデータ構造に至るまで,分野横断的な諸側面において興味深い性質を有している.本稿では,そのような諸側面を簡潔に紹介する.