2020 年 13 巻 3 号 p. 187-196
1960年頃から1980年代にかけて,様々な生命現象に多くの注目が集まり,非線形数理モデルを用いて盛んに研究がなされた.本稿では,カイアニエロの神経モデルや南雲・佐藤モデルなどの単純神経モデルや生物振動子のモデルを例として,異なる文脈で生じたモデルに,一次元離散力学系(一次元写像)で表現される共通のダイナミクスが関わっていることを示す.特に,区分線形写像が生成する非線形力学を詳細に説明し,極めて複雑な非線形現象が,実に単純なダイナミクスによって生み出されていることを示す.