組合せ論的ゲーム理論の礎とも目されるE.R. Berlekamp, J.H. Conway, R.K. GuyによるWinning Ways for Mathematical Playsという今や古典的な名著の翻訳を昨年の秋に完了した.その機会に合わせてSITA2019霧島のワークショップにおいて講演したので,そのときの話題を中心に組合せ論的ゲームを解説する.組合せ論的ゲームというのは,2人のプレーヤが交互に着手し,ゲームの規則,勝敗の判定法など必要となる情報はお互いに完全に分かり合っており,偶然性は入らないゲームをいう.そのようなゲームは子供のお遊びのチック・タック・トウ(マルとバツ),点と箱などから,囲碁,将棋,チェスなどという高度の戦略を必要とするゲームまで広範囲にわたっている.ゲームの勝敗を知るためには,局面の値を決定することが重要である.そのような値は単に数だけでは表現できず,Conwayの発案になる実数を拡張した超限実数という概念も顔を見せてくる.