2022 年 15 巻 4 号 p. 300-309
富士通は理化学研究所とともにフラッグシップ2020プロジェクトに参画し,スーパーコンピュータ「京」に続く我が国の旗艦コンピュータシステムとなるスーパーコンピュータ「富岳」を開発した.フラッグシップ2020プロジェクトでは,多様なアプリケーションを高性能かつ低電力で実行可能とすることを目標に掲げ,その達成のためにコデザインと呼ぶフレームワークを導入して「富岳」の開発に取り組んだ.コデザインはシステム開発者とアプリケーション開発者が協調してアプリケーション性能に優れたシステムを目指すアプローチで,アプリケーションの特性分析結果を用いて,システムハードウェア設計上の多くのパラメータが決定された.そして完成した「富岳」はコデザインの狙いどおり,実用的なアプリケーションを高性能かつ低電力で実行可能なシステムとなった.コデザインの対象は,ハードウェアからアプリケーションまで多岐にわたるが,本論文ではその中で主に「富岳」のプロセッサA64FXの開発に焦点を当てて開発を振り返る.