2022 年 16 巻 2 号 p. 100-114
ビックデータ時代の到来とともに,ネットワーク上を流通するディジタルコンテンツが増加の一途をたどり,エッジ/クラウドコンピューティングでのデータ処理が急速に普及してきている.例えば,データ量を圧縮するための圧縮符号化,データ内の有意な情報を抽出するデータマイニング,データの分類や予測を行うためのモデルを自動的に学習する機械学習などが挙げられる.しかし,サービス提供者の信頼性欠如や事故によるデータの不正利用や流失によって,プライバシーを侵害する問題の発生が危惧されている.このような背景から,プライバシーを保護しつつデータ解析・信号処理を行う手法として,ランダムユニタリ変換に基づく秘匿スパースモデリングが提案されてきた.この秘匿化演算の特徴は大幅な計算量の増加を伴うことなく,1)スパースモデリングのアルゴリズムを変更することなく利用可能,2)秘匿化領域における処理により,秘匿化前の原データに対する処理結果と一致する結果を保証できる点にある.本稿では,ランダムユニタリ変換に基づく秘匿スパースモデリングの基本的な仕組みからときおこし,秘匿化領域におけるデータ処理の有効性をエッジAIへの応用例を通して概観する.