2023 年 17 巻 2 号 p. 136-146
散逸のある古典波動系と分散のある量子系の確率的粒子モデルを紹介する.古典波動系の粒子モデルは,離散化された時空間において,位置についての確率密度関数の時間発展が古典波動の伝搬に等価となるように振るまう.エネルギー散逸がない古典波動系の粒子モデルを用いて,内部信号が単一電子や単一磁束量子により表現されるディジタルウエーブフィルタを構成できる.散逸のある古典波動系は減衰振動のある拡散系と見ることができ,粒子モデルは擬似乱数列の並列生成器としても応用可能である.モデルのパラメータを変化させることにより,粒子の運動である擬似乱数列の自己相関を正にも負にも設定することができる.一方の量子系はシュレーディンガー方程式またはパウリ方程式により記述される非相対論的系とする.量子波動のモデルとなる粒子の確率密度関数の時間発展は統計的にこれらの波動方程式に等価なフォッカープランク方程式により記述される.この方程式から同じ移流項と拡散係数をもつランジュバン方程式を得る.偏微分方程式である波動方程式でなく,常微分方程式であるランジュバン方程式によりモデル粒子を記述できるので,このモデル化は,例えば,量子力学的デバイスの回路シミュレータモデル作成の理論的基盤を与えることができる.