2024 年 18 巻 2 号 p. 137-146
弦・梁・膜などの変形する物体の数理モデル,流体力学のバーガーズ方程式,量子力学のシュレーディンガー方程式などに代表される「非線形偏微分方程式」は,自然界の様々な現象を表現可能であることがよく知られている.しかし,非線形性や無限次元性などの性質から解析並びに制御が非常に難しく,現在でも様々なアプローチによる研究が活発に進められている.その中で非線形偏微分方程式の離散構造に着目した「離散力学」並びに「超離散化」というアプローチがあり,いわばシステムの重要な「離散的骨格」を抽出することに対応するといえる.更に,非線形偏微分方程式の離散構造を用いることによって,離散値のみを扱うコンピュータとの親和性の高い制御系設計が期待できる.本稿では,筆者らの研究を中心として,幾つかの基礎並びに応用を含めた関連内容を報告する.